ある女性の場合

       ここにあげる例は一日中引きこもりの状態にある人からはそんなのは引きこ
      もりではないと言われるかもしれませんが、一つの例としてあげさせていただ
      きます。

       彼女は仕事がよくできるキャリアウーマンです。
       仕事は休むことなく毎日会社に出勤し、まじめに働いています。しかし仕事
      以外のことは引きこもりといえる状態になります。
       彼女は仕事の帰りに、スーパーやコンビニで買い物をして家に帰ります。
       週末の休日の前夜の買い物は買い忘れのないように特に注意し、たくさんの
      買い物をします。
       というのは彼女は仕事以外では外出できないので、買い忘れると週末の休み
      に不自由な思いをするからです。
       彼女が外出できるのは、たぶん仕事とお医者さんと美容室ぐらいでしょう。
        (私の体験からの推察です)
       仕事に行ければいいではないかと言うようなものですが、このような状態で   
      は職場で活き活き働いているとは、とても考えられません。働けているのは、
      収入が必要なこと、会社や職場の仲間への義務感や責任感などからでしょう。
       
       このような状態で生活しているのはあまり楽しくはありません。
       これは想像して言っているのではありません。私自身そのような状態が大変
      長く続いたからです。
       私の場合、幸い同居する家族がいたため生活の不自由さはあまり感じません
      でした。
       しかし、落ち込みのひどい時は元気な家族の中で疎外感や孤独感を強く感じ
      ることもありました。
       職場では暗くうっとおしい気分で働いていました。孤独感を感じながら。
       家での暗く消極的な気持ちが、一日中支配しているのですから、職場の健康
      な人たちと休憩時間の話しなどでも共感できるはずがありません。それが孤独
      感の原因です。
       このような自分の体験から彼女の心を推測してみることが、できると考えて
      います。

       私がそこから脱出できたのは高血圧対策に始めたウォーキングの心理的、精
      神的効果のたまものです。仕事人間ではなくなったこと、人生ではじめて趣味
      らしい趣味をもてたこと。ウォーキングで自分の時間を楽しむことができるよ
      うになったのです。  歩き始めて人生が変わりました。
       前向きな心が育ち、それが、ますます逞しくなったことが思いがけない、
       そして大変うれしいウォーキングからのプレゼントでした。
       おかげで引きこもり的な心の状態から脱出できました。

       歩き始めの頃は会社の帰りにスーパーの駐車場に車をとめて歩きました。歩
      き終わってから買い物をしました。お客さま以外の駐車はお断りしますと書い
      てあったからです。冗談です。その前からも買い物して、ひいきにしていた
      お店です。
       コースが他に変わっても必ず車で行けるところでした。実は、家からすぐに
      ウォーキングを始めることができなかったのです。変な人だと思われたくなかっ
      たのです。今から考えると大変おかしな考え方ですが神経質特有の自意識過剰
      の考え方だと言えるでしょう。人は余り他人のことは気にしていません。
       ウォーキングのために家から歩いて出られるようになったのは2年以上たっ
      てからだと思います。
       この頃やっと心の自由が得られてきたのでしょう。一応引きこもりから完全
      に脱出できたと言えるでしょう。
       しかし本当の意味での自立には、まだしばらくかかりました。
       今振り返ってみて言えることですが。

       
       彼女のような、また一時期の私のような、隠れ引きこもりと言うか、引きこ
      もり予備軍と言うか、そのうな人は大変多いと思います。引きこもりと言われ
      る人たちの何倍もいることでしょう。


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