テレビで見たある青年

       ある日の晩、ホームページ作りで疲れた頭を休めるために、めったに見る
      事のないテレビを見ました。妻が見ているテレビを横から見たのです。
       そこには優しそうな顔をした青年が映っていました。アナウンサーが、
      「このように自分の部屋にとじこもり、食事もこの部屋で一人でとることが、
      ずっと続いています」と言っていました。
       それは少し前のNHK教育テレビの放送でした。
       彼の少し風変わりな生活を見て、興味を持ち、引き入れられるように、見
      ました。
       途中から見たので、彼の引きこもりが何時から始まったのかも、何才から
      始まったのかも詳しいことは憶えていません。
       彼は20才代だったと思います。これまで働いた経験があります。コンビニ
      の店員として結構長く続き、また軽四輪貨物を買っての運送業として、ごく
      短期間働いた経験があります。

       いずれも強過ぎる責任感や緊張感から続かなかったと聞いたと思います。
       社会に慣れていないからと言えそうですが、私はもっと深いところに原因
      があると考えています。

       ある夜彼はお父さんと夕食をともにすることにしました。ずいぶん久しぶり
      のことです。
       食事を終えた彼はお父さんに言いました。
       「僕は小さい頃、仕事で疲れたお父さんが帰ってきて、大きな声で話すのを
       聞いて、大変怖かった。」などと話しました。(記憶を頼りに書いています。
                            正確さに自信はありません。)
       お父さんは静かに聞いてくれました。
       しかし彼は思っていた程よい結果を得られなかったのか、次の晩から再び、
      自分の部屋での食事を続けられたそうです。
       (自分の気持ちを話したことが大切だと思います。後からこれについて考えます。)

       画面がかわり、彼が参加した、NHKでの引きこもりの人たちとの意見交換
      の場が紹介されました。映し出されたのは、休憩時間か、収録後かと思われる
      場面でした。彼は同年代かと思われる女の人と話していました。
       彼女は「私とおんなじ、私も彼と同じことしてた。本当にいっしょ、彼の気
      持ちがよく分かる」と言っていました。彼女の共感ぶりが良く伝わる話し方で
      した。

       その後に彼が女の人に会いに出かけました。ひとりで電車に乗って。
       私は自分を理解してくれる人と再会したいという強い思いが、彼の外出を促
      したのだと思いました。
       電車に乗った彼の姿を映しながら番組が終わったと記憶しています。

       彼の自立へのスタートであって欲しいという気持ちで一杯です。 

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